幼稚園の娘が凧に絵を描いていたのですが、普通のお絵描きのよう
に細かい絵をちまちまと描いていたので、思わず「もっと大きく描
いたら?」と声をかけたら、「これでいいの!」と怒られてしまい
ました。そういえば、私が子供の頃にも似たようなことが…。
あれは確か小学校の3、4年のときです。図工の時間に近所の神社の
絵を描いたんですが、筆の遅い私はいつものように時間内に終わら
なかったので、持ち帰りの宿題となりました。
半分ほど塗り残した部分を、家でちまちまと塗っていたら、隣でボ
タン付けをしていた母が、「そんなんじゃ今日中に終わらないで
しょ。」と、口を出して来たので、「しょうがないでしょ。」と反
論すると、母はおもむろに私の筆を取って、「絵はこういう風に描
くのよ。」と勝手に塗り始めました。
木の枝も葉っぱも全部緑でベタ塗りです。キャーキャー騒ぐ私を無
視して、次は青や黄色や茶色の絵の具をたっぷりパレットに出した
かと思うと、筆にどっぷり付けて、ベタ塗りの上から重ねていきま
す。筆も洗わず、複数の色を筆に乗せては、どんどん画用紙の上へ
と運び、最後に茶色で細かい線をスッスッと引いて、枝も復活です。
あっという間に立派な木が完成し、私があっけに取られていると、
「絵は写真じゃないんだから、枝の一本、葉の一枚まで、忠実に描
かなくていいの。ベースの色で薄く全体を塗った後で必要なだけ色
を足していけばいいの。」と、満足気に教えてくれました。
そうい
えば、学生の頃は美術部だったって言ってたっけ。
確かに、こんな塗り方は知らなかったし、紙の上に絵の具がそのま
ま盛り上がってくっついてるのも初めて見る光景で、目から鱗とい
うか、とても衝撃的だったのを覚えています。お蔭で、それからは
図画の完成時間がかなり短縮されました。
ただ、その宿題の絵は、左端の木だけが油絵調になっていて、明か
に『大人が描いたでしょ』になっていました。先生からは何も言わ
れませんでしたが、母上様、小学生の宿題ってことを、もう少し考
慮して欲しかった!
今、娘の凧に口出ししながら、ふと自戒の念を込めつつ、そんな記
憶が思い出されました。